ミチユ視点

 

ミチユ『ごめん!あたしの負けだ!』

 リリが教室へ入ってくるやいなや、あたしはすっぽんぽんのまま両手を合わせて大げさに頭を下げる。

リリ「ど、どうしたの急に?」

 いきなりのことに、目を丸くさせているリリ。リリの目線がチユへ行くと、チユは小さく頷いた。

ミチユ『いや、こいつから聞いたよ・・・実はあたしももう終わりにしたくてさ。』

   チユの表情をこまめに確認。変にこいつがオドオドしていたらこの芝居がバレかねないし。  チユ自身、あたしが何をするか良く分かっていないから動きようも無いだろうが、 リリを何かしら疑わせるのは極力避けたい。

リリ「そう・・・わかった。」

 拍子抜けした。リリが和解を望んでいたとはいえ、今まで散々争ってきた「仲」だ。 普通に考えてこんな容易く話が進むか?

 だが、リリは疑いの目でこちらを見るでもなく、自分のスカートのポケットに手を入れ、そこから鍵を取り出した。

リリ「・・・隣の用具室の、2番目のロッカーにある。」

 うつ向き気味にこちらへ鍵をかざす。リリではなく、あたしが疑いの目を向けそうになるほど のとんとん拍子。
 とは言っても今の状況では何も分からない。状況を見るしかなさそうだ。

リリ「仕返しのつもりだったけど、あたしもやりすぎたよ。ごめんなさい。」

ミチユ『い、いいっていいって!もう水流そう?な?』

 演技とはいえ自分の吐いた言葉に反吐が出る。どう考えてもコイツが全部悪い!
ちょっとのイタヅラであたしらにこんな酷い目あわせやがって!!

  ミチユ『マドカは?』

リリ「あ、そか、どうしよう・・・。」

 どうやら終戦と思って気が抜けてしまったようで、声に覇気が無いオドオドとしたいつものリリの口調 になっていた。さっきまでのチョヅキ方とは雲泥の差だ。

ミチユ『あたしが謝って、説得すれば大丈夫だ。どうせあいつ一人じゃお前も苛められないだろうし。な?』

 チユの方を見ながらリリの肩を小さく叩く。チユはあたしに同調するように首を縦に振る。

リリ「それじゃあ先に、持ち物渡しておくね。」

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 埃まみれの用具室。大きな定規や地図、脚立など、普段それほど多用しない用具が 整然と積まれている。

 掃除用具を入れるのと同じ、縦長のロッカーが教室の奥に並んでいた。

リリ「このロッカーにあるから。服と、携帯と・・・それからカメラと、剥がしたポスターも。」

 ここであたしはリリをふん縛って荷物を回収・・・!と今までなら行ったかも知れないが、 マドカの馬鹿の件もある。リリを縛って、ロッカーを開けたら空っぽ。なんてことになったら、服はリリから 剥ぎ取れば良いが、被害はデカくなる可能性がある。

 廊下を通った時に気づいたのだが、かなり日が昇っているため、拘束中に大声でも出されたら 運動部員や清掃員が来る可能性も高い。自分が服を盗んだ時ならいいが、自分が素っ裸のときに 来られたらたまらない。いや、幸運にもあたしが服を着れても、持ち物を見られたりしたらたまらない!

 リリが二つ返事で和解案を呑んだのもこれが大きいのかもしれない。この時間なら校内に人も増えてきている し、大騒ぎが出来ないのだ。大きな声を上げられるのはただ一人。


 服も着ていて、恥ずかしいデータもほとんど無いリリ・・・。


 まずはロッカーに「しっかりあるか」を確認しなくてはいけない。あいつがハメようとしてるのか本気で終わらせようと してるのか、そんなことは関係なかった。結果としてあたしが行うことは既に決まっていた。

  ミチユ『わりぃ。リリがカバン取ってくれない?あたしヘトヘトなんだよ。』

 本気で疲労がマックスだったのもあるが、それ以上に、ロッカーから取り出させたほうがリリの動作を自然に 観察できることが大きい。あたしが見ていればリリも変なことは出来ない。

リリ「いよいしょっと・・・。」

チユミ「うんしょ・・・。」

 何も考えていなさそうなチユと力をあわせながら、ロッカーから大きなカバンを引っ張り出し、自発的にジッパーまで開けるリリ。あたしは中身を覗き込む。

リリ「ほら、全部あるでしょ?」

 そう言ってすぐに閉めようとするリリ。おっと、そうはいかない!

ミチユ『疑うわけじゃないけど、それじゃあ制服とポスターの一部しか見えなったよ。携帯とかは?』

 今回のアイテムで一番大事なものは、

 @携帯電話、Aあたしの裸が写ってるポスター、それとBカメラだ。


特に重要なのは携帯電話。何せ、これさえ持っていればすぐに動画データを転送出来る。すなわち、即効性のある脅迫材料となりえるからだ。 服なんかはさっき言ったようにリリからも剥ぎ取れるので2の次だ。

 リリが視界に入る位置に体を移しながら、カバンの中を確認する。制服2着、体育着1着、ポスターは・・・あたしのは確か8枚だったな。自主回収したから覚えている。よし、枚数分あるぞ。まぁポスターなんかは複製が容易だからまだあるかもしれないが、所詮静止画だし最悪リリが嫌がらせで作った合成と言い張れば問題ない。

 問題は動画データが入ってると思われる、カメラと携帯だ。

カメラはリリの持参らしく、旧式の小型テープ入れるやつだったはず。本数も合っている。以前カバンを漁った時に ここら辺は確認済みだし、家電ショップはこの地区に無いので買い足すことも不可能だったと思われる。よし。

 さいごは携帯か・・・。

ミチユ『よし・・・。』

 あたしの携帯が顔を出した。口元がにやける。あの馬鹿、本当に全部渡しやがった!

ミチユ『おっと・・・!』

 あっぶね。まだ安心できない!他の携帯も確認しないと!3本。マドカあたしチユ・・・その3つが入っていないと意味が無いんだ!
こいつならあたしが自分の携帯だけ確認して安心すると見越して、何か考えているかもしれない。

 それに、逆襲するにあたって大事なことは、リリから完全に情報手段を絶つこと。情報力を持っていれば強いことは 今回重々身にしみた。3本携帯があれば、リリの携帯はぶっ壊れてるから問題ない。

 携帯2本目・・・3本目・・・!ジャラジャラしたストラップを垂らした品がちゃんと出てきた。

ミチユ『ん、あれ?』

リリ「どうしたの?あったでしょ?」

ミチユ『チユの携帯知らねぇ?ロッカーにこぼれちゃってるとか。』

リリ「え?しっかりかばんに入れたからロッカーには・・・。」

 リリがロッカーに顔を入れた瞬間、あたしはそのケツを思い切り押し込んでやった。

リリ「きゃぁっ!!」

 ひ弱なリリは、抵抗するまもなく、ロッカーにすっぽりと入れられ、あっけないほど容易く 監禁された。

ミチユ『ほら!お前も手伝え!』

チユミ「え、で、でも、もう・・・。」

ミチユ『手伝わわねえとただじゃおかねえぞ!?』

 気が引けてるチユにロッカーの扉を押さえ込ませ、あたしはロッカーを、手近にあったビニール紐でこれでもかというほど グルグルと縛りつけた。これに防音用に布でもかければ、大声を出されても外まで届くことはまず無い。

ミチユ『くふふふ・・・あたしに歯向かうからよ♪』

   完璧すぎた・・・。決まってしまえばあっけないもので、あとはコイツを自由に料理すりゃいい。 今までやらされたようなみっともない踊りさせまくって、それを動画撮影してやろう。ケツに 空き缶ぶちこんでやったり、男どもに一発1000円でマワさせるのもありだな。いや、100円じゃないと ダメかもなw

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