調教部屋第2部 洸廼 スミカ視点 第8話「玉砕」









『おい、何よ来れないって。』

 公園へ向かう道すがら、あたしはカズサと通話していた。

カズサ「ごっめ〜ん!今ラブホ(はぁと」

 あたしは舌打ちをして通話を切る。学校やモデル業での鬱憤が溜まってイライラが収まらない。  マドカってやつが言ってた女イジメて今日は憂さ晴らそう。

 あたしはお気に入りのバナナ豆乳ドリンクを出そうと鞄を漁った。

『・・・チッ。マドカって奴に渡しっぱなしだった。』

 リリっていうアホ面の女をぶん殴ってた時に3本買いに行かせて一本しか飲んでなかった。あのメーカーの奴ってここら辺に売ってないんだよなぁ。とりあえずマドカに会ったらまだ持ってるか聞いてみるか。

ーーーーーー

『やっばっ。』

 今日入ってる仕事がキャンセルされたせいで、思いの外早く着いてしまった。予定より1時間くらい早いな。

『ん?』

 トイレの暗がりに人影。どこかで見覚えある風貌だ。

 アホ面のリリ。

 何でマドカじゃなくてこいつがいるんだ?

『なにしてんの。』

リリ「あぁ、こんばんは〜。」

『は?マドカは?』

リリ「さぁねぇ。」

 人をおちょくるような言い方で、わざとらしいリアクションをしてきやがる。こいつ、何か企んでんのか? あたしは右手を握り締め肘を折る。

リリ「おっと!」

 待ってましたとばかりにスマホを取り出すリリ。まさかこいつ・・・

リリ「そうそう。マドカちゃんがこのスマホで撮ってたでしょ?アンタがあたしをぶん殴ってる動画。」

リリ「で、あんたがMYSAっていうタレント名でデビューしてるのも知っちゃったんだけど」

 やっぱりそうか。あたしはずずいとリリに近づき見下ろす。身長差でおびえの表情をかすかに残しているリリのボディにあたしは右拳を捻り込んだ。

リリ「げぶっ!!」

『やれるもんならやってみれば?』

リリ「ぞ、ぞんなごといっで・・・ぐばっ!!」

 立て続けにボディをブチ込む。

『流せるもんなら流してみな。弁護士のツテあるから、損害賠償がっぽり取ってやるわ。将来有望なモデルが損失した損害額考えたら、一生あたしに払い続ける額になるかもね。』

 倒れ込んだリリのツラを踏みつける。あたしがぶん殴った女がこんな感じで動画やら録音やらで脅しをかけてきたことはあったが、結局裁判沙汰にする覚悟まではないようで、この話をするだけでたいていあちらが折れた。こいつも例外ではないはずだ。こいつどころかこいつの家族にまで被害がいくんだから。

 例え、こいつがバカで裁判起こそうとしても、パパはほとんどのメディアに広告を出している 企業の幹部なので、メディアを味方にして逆転出来る自信もある。パパ自身が酔っ払ってた時に 半分冗談で言ってたことだけど、あながち間違いでもないだろう。

 強盗したことが公になったタレントですらテレビに出てるのが今の業界だ。

『ったく。無駄な時間使わせて。』

 ふと、リリが持っていた鞄に目がいった。中には、あたしが買ったバナナ豆乳ドリンクがある。

『ナニこいつ。マドカの鞄持ってきてたのか。まぁどうでもいいけどあんな奴。』

 鞄からドリンクを取り出し、ストローを差し込む。あたしはそれを飲みながらしばらくボロ雑巾のようになったリリの姿をながめる。自分の中のイライラやモヤモヤが消え、爽快な気持ちになる。

 気分が晴れやかになったあたしは、リリを蹴り転がして公衆トイレの影に移動させた後、公園を出ることにした。

 公園の出口に向かう間、目がかすみだした。ゴシゴシと目をこするが、次第に体が重くなる。

『ん・・・何か急に眠く・・・。』

    異常に急激な睡魔があたしを襲い、あたしは公園の入り口付近でへたりこんだ。もう一歩も動けないほど眠い・・・。

 

                                        

*一応重要なシチュのある部分は2文字にこだわらないように考えてまする。 でもタイトル”玉砕”ってどうなんだろ。

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